ポートスキャンの基本
Nmapはここ数年で、機能面でいろいろと拡充されてきたが、もとは効率的なポートスキャナとして開発されたものであり、ポートスキャンは今でもNmapの中核を成す機能である。nmap
<target>
というシンプルなコマンドで、<ターゲット>
ホスト上の1660個あまりのTCPポートをスキャンできる。多くのポートスキャナでは従来、すべてのポートは一括してopen」(開いている)かclosed(閉じている)のどちらかの状態にあるものとして扱われてきたが、Nmapではさらにきめ細かく取り扱われる。すなわち、ポートは以下の6つの状態に分類される: open
、closed
、filtered
、unfiltered
、open|filtered
、またはclosed|filtered
。
これらの状態は、ポート自体に固有の特性ではなくて、Nmapがポートをどのように認識しているかを表している。例えば、Nmapがターゲットと同じネットワークからスキャンを行うと、135番/tcpポートはopen状態にあるように見えるが、同時刻に同じオプションでこのスキャンをインターネット上から行った場合、同ポートはfiltered
と見えるだろう。
- open
このポートでは、アプリケーションがTCPコネクションやUDPパケットをアクティブに受け入れている。多くの場合、ポートスキャンの第一の目的は、この種のポートを見つけることである。セキュリティを重視する人なら、openポートが攻撃者の通り道になることをご存知だろう。攻撃者やペンテスト実施者は、このopenポートの弱点を突こうとする一方で、管理者は正規ユーザの利用を妨げることなく、これらのポートをファイアウォールで閉じたり防御したりしようとする。また、Openポートを見ると、ネットワーク上で利用可能なサービスが何かわかるので、セキュリティスキャン以外でも興味を引かれるポートである。
- closed
closed(閉じた)ポートは、アクセス可能(Nmapのプローブパケットを受信したり応答したりする)だが、そこで受信待機しているアプリケーションはない。この種のポートは、あるIPアドレスでホストが稼動中であることを確認する場合(ホスト発見やpingスキャン)や、OS検出の一環として役に立つ場合もある。closedポートは到達可能なので、後にその一部が開放された場合は、スキャンの対象になる可能性がある。管理者がこの種のポートもファイアウォールでブロックすることを検討する場合もあるだろう。そうなると、これらは次で述べるfiltered(フィルタあり)状態として見えるようになる。
- filtered
Nmapは、このポートが開いているかどうかを判別できない。なぜなら、パケットフィルタのせいで、プローブがポートまで到達できないからである。このフィルタ処理は、ファイアウォール専用機器、ルータのルール、ホストベースのファイアウォールソフトなどで実行できる。これらのポートからは情報がほとんど得られないので、攻撃者の企てを阻むことになる。場合によっては、タイプ3コード13(destination unreachable(宛先到達不能):通信が管理上の理由で禁止されている)などのICMPエラーメッセージを返すこともあるが、応答しないでプローブを破棄するだけのフィルタのほうがはるかに多く使われるようになっている。この場合、Nmapは、プローブが破棄されたのはフィルタリングではなくてネットワークの混雑のせいと見なして、再試行を数回行わざるを得なくなるので、スキャンの進行速度が格段に落ちる。
- unfiltered
unfiltered状態とは、ポートにはアクセス可能だが、そのポートが開いているか閉じているかをNmapでは判別できないことを意味する。ポートをこの状態に分類できるのは、ファイアウォールルールを解読するのに使われるACKスキャンだけである。unfilteredポートのスキャンをその他のスキャンタイプ、例えばWindowスキャン、SYNスキャン、FINスキャンなどで行うと、ポートが開いているかどうかを決めるのに役立つ場合もある。
- open|filtered
Nmapがポートをこの状態に分類するのは、対象のポートが開いているかフィルタ処理されているかを判別できない場合である。openポートからの応答がないタイプのスキャンには、こうしたケースが発生する。また、応答がないことは、プローブやそれが引き出した応答をパケットフィルタが破棄したことを意味する場合もある。そのためNmapは、対象のポートがopenなのかfilteredなのかを確実に見分けることができない。UDP、IP プロトコル、FIN、Null、Xmasなどのスキャンは、ポートをこの状態に分類する。
- closed|filtered
この状態は、ポートが閉じているかフィルタ処理されているかを、Nmapが判断できない場合に用いられる。IPID Idleスキャンにのみ使用される。